風光明媚な大三島を感じ、いざ建築へ「今治市伊東豊雄建築ミュージアム」

建築

はじめに「瀬戸内海の大三島へ」

今治市伊東豊雄建築ミュージアムは瀬戸内海の大三島(おおみしま)にあります。

大三島はしまなみ海道が通っているため、今回は自転車をレンタルしアクセスすることにしました。広島県の尾道から大三島は4~5時間くらいで行けます。

自然あふれる島々と澄んだ内海を見ながら進めんでいるためか時間はあっという間に過ぎてしまいます。問題は大三島に入ってからミュージアムに行くまでの道のりです。

それが2通りあり、山の中を突っ切るルートと海を見ながらアクセスする5kmほど遠回りの外周ルートです。

私は景色の移ろいも楽しみたかったので外周ルートを選びました。しかしミュージアムまでの道のりはなかなかに大変です。

尾道から大三島に行く道のりよりも大三島に入ってミュージアムに行くまでの道のりの方が上り下りの回数が多くて辛かったです。

下り坂はとても爽快なのですが、上り坂でせっかく貯めた位置エネルギーが減っていくという絶望を感じながら下っていました。

ここまでくると体力というよりは精神力の方が大事です。もし自転車でいく場合はこのサイクリストも車も全然通らない外周ルートで行ってみることをお勧めします。

ミュージアムに着いた時の達成感で疲れは全てチャラになります。

大三島の活動を展示するスティールハット

ミュージアムには大三島を紹介するスティールハットと、今はもう存在しないシルバーハットを再現した建物があります。

スティールハットは鋼板で覆われた多面体の壁に部分的にボリュームが立ち上がっています。

壁に貼ってあった小学生の感想欄に「僕はラッコだと思いましたが、船だと知ってびっくりしました」と書いてありユニークさに微笑んでしまいました。確かにラッコでもしっくりきます。

多面体は一辺3mの正三角形・正方形・正六角形によって構成されていて、一見複雑なのですが平面図を見ると正六角形平面が六つくっついているという簡潔なものになっています。

敷地が海に面していて傾斜もあるため、建物内もその地形に合わせてエントランスレベルから1層下がった部分があります。

多面体が作り出す内部の細切れの空間は三角形や矩形の開口が繋げています。

サロンと呼ばれる一番奥の吹抜け空間はシナベニアで仕上げられていて、ここだけテイストが異なります。

そこには展示のほか、伊東さんのデザインした照明「MAYUHANA」があり、グラスファイバーと樹脂の複合した糸で作られていて繭のような繊細さが美しいです。

そして屋上テラスにも上がらせて頂きました(通常は安全上封鎖されていますが、スタッフさんに声をかけたら上がらせてもらえました)。

やっぱり瀬戸内海は綺麗だなぁと再認識させられましたが、展望するだけではどこでもできるためベンチがあってもいいかなとは思いました。

設計のアーカイブが見られるシルバーハット

原型のシルバーハットは伊東さんの自邸として東京都中野区にありました。

シルバーハットは柱がRC造で屋根がS造です。

平面は3630mmのグリッドで、グリッドという考え方は一辺を3mとしたスティールハットと同じです。

上部にはヴォールト屋根が連続してかかり、屋根のフレームには原型と同様にアングルと丸鋼が使われています。

原型と異なるところは屋根が完全に覆われているところです。

屋内は伊東さんのこれまでの設計やコンペでの模型や、設計図書までありました。

入口に入ってすぐそばにあるベンチは板を何枚も重ね、座る位置をくぼみがつくように削っていてその隣り合う同士も緩やかにつながるように削られていてうねりが表現されている面白い椅子でした。

海の望める2階部分は家具スペースとして、構造的にも機能するゴミ箱がくっついたテーブルなどがあり、家具デザイナー・大橋晃朗さんのデザインした家具が見られます。

ソファに腰を下ろすと前面がヴォールト屋根によって縁取られたピクチャウィンドウとなっていて、向かいの大崎上島を望めます。

敷地内の見覚えのある形たち

敷地内には鉄板で作られた模型が3つ(サーペンタイン・ギャラリー・パビリオン、銀座ミキモト、多摩美術大学図書館)あり、贅沢なゆとりをもって置かれていました。

このようにして見てみると、伊東さんの作品はどれも建物の素の形が全体の印象に深く関わっているということが伝わってきます。

近くの美術館「今治市岩田健母と子のミュージアム」

伊東豊雄建築ミュージアムから3kmほど離れたところに岩田健母と子のミュージアムがあります。

こちらも伊東豊雄さんの設計です。

大三島を外周ルートで行くと先にこのミュージアムに遭遇します。

この建物はRC造の壁で円形に囲われています。

その円形に沿って庇がオーバーハングしてかけられています。

外壁の曲率は16mRと24mRの2種類からなっています。

円弧をずらしたところから光が入ってきたり、外と接続されるように設計されています(建物内は写真撮影が禁止でした)。

この敷地は元々は小学校の校庭だったところで、そばにある「大三島ふるさと憩の家」は小学校の校舎を改修して宿泊所となっていて、こちらも伊東さんの携わる大三島のプロジェクトによってできたものです。

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