童心に帰れる場所「ちひろ美術館・東京」

建築

住宅街に現れる赤い建物群

東京のちひろ美術館は練馬区にあります。長野県安曇野市のちひろ美術館と同様に、設計は内藤廣さんです。

建物は分棟配置されていて、一つ一つが周囲の住宅地のスケールと合っていますが、赤色に塗装されたステンレス鋼板の外観は結構目立ちます。

隣のマンションも同じような色合いだったのは偶然なのか意図されたものなのかは分かりませんが、その連続性が色とは区切りのことだということを再認識されてくれます。外壁の鋼板は縦ハゼ葺きで、一定間隔で入るラインが軽やかさを演出しています。

建物に浸透してくる庭

庭には緑が多いので内部からはガラスのスキンを通して常に緑が感じられます。庭で併設するカフェのご飯を食べられるのでそこはすごく居心地が良さそうでした。

また、建物に囲まれた中庭であるため反対側の様子が感じられて各室の距離感が近いです。中庭は全体に浸透する親和的な機能を持っていることを感じさせられます。

機能に溶け込むスティールの構造体

構造は1階がSRC造で2.3階がS造なのですが、内に開き外を閉じる構成で耐力壁が外周部に設けられています。そして1階の打放しのコンクリートは杉板の型枠のテクスチャが残ります。

またS造でもあることが、サッシと同間隔で立てられている十字の熱押型鋼があることによって分かります。注意してみなければ見逃してしまうくらい溶け込んだディテールがあり勉強になりました。

天井を構成するもの

また、1階の展示室の天井はジョイストスラブで小梁が見えているのですが、あまり見かけない作り方だと思っていたら最近は施工に手間がかかるため使われていないらしいです。

内藤さんの言葉である「建築はその時の技術が反映される」というのはこういうところから感じられます。

2階の天井は合板の目透かし張りとなっています。触ってはいないのですが、ザラザラとした質感が伝わってきます。

全体の空間構成として、展示の用途を決して邪魔せず、かつ子供からお年寄りまでが歩き回れるヒューマンな大きさと動線だと思いました。

中村好文さんがデザインした椅子

ところで、2階の廊下にかなり特徴的な椅子が置かれていました。安曇野のちひろ美術館では中村好文さんのデザインした椅子が使われていますから、調べてみるとこちらもやっぱり好文さんの椅子でした。

「ララバイ」という名前らしいです。繊細で手に触れてみたくなる椅子です。

温かな絵の世界に引き込まれる

ちひろ美術館は「いわさきちひろ」さんという画家のための美術館なのですが、その作品はどれも童心に帰らせてくれるような心温かいものでした。

こういう美術館を見に行った時は自分のお気に入りを一つ決めようと心がけているのですが、今回は2つありました。「ぽちのきたうみ」という絵本と「海辺の小鳥」という絵です。

普段は滅多に買わないのですが、気に入ってしまったので帰りにショップでポストカードを買ってしまいました。ちひろ美術館は誰でも楽しめる場所でした。


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