台北の建物探訪11選《台湾旅》

建築

はじめに

2018年に始めて台湾に行きました。

日本と文化が違えば、人の行動も考え方も変わり、当然建築に対する考え方、そして現れ方も違ってくるはずです。そんな視点から街を、そして建物を観察してきました。

“台北”は台湾の中枢都市であり、台中や高雄といった台湾の他の都市よりも様々な密度が高いです。その台北にある建物を紹介します。(個人的なお気に入りは高雄なのですが…)

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総統府(Presidential Office Building)

総統府は日本が台湾を統治している時期に建てられました。1919年に完成し、設計は日本の森山松之助と長野宇平治(ながのうへいじ)が担当しました。

外観はルネッサンス様式風な辰野金吾的デザインが特徴です。台北駅から歩いて行ける距離ですが、夜に行ったら人は全然居ませんでした。

平日の午前には無料見学会をやっています。日本人ガイドによる案内をしてくれるようです。

臺北市立美術館(Taipei Fine Arts Museum)

臺北市立美術館はホワイトの箱が積まれた形態が特徴的な美術館です。設計は台湾の建築家・高而潘さんによるものです。

積み重ねのパターンでは”ずらし”の操作でヴォイドを形成しやすく、内部の回遊性も生みやすいです。その結果、内部には多様な展示空間が形成されています。

この建物については別記事でも紹介しています。

舞蝶館(EXPO Hall)

舞蝶館は臺北市立美術館と同じ、花博公園(TAIPEI EWPO PARK)の敷地内にある半屋外型のコンサートホールです。設計は台湾の金光裕建築事務所(king shih architects)です。

繭のような形をしており、スティールの構造体に二色のポリカーボネート版が貼られています。


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台北文創大樓(Taipei New Horizon)

台北文創大樓の設計は、日本の建築家・伊東豊雄さんです。14階建ての中にショッピング、ホテル、コンサートホール、会議室など複合的に入っています。

3階には「誠品生活」という日本でいう蔦屋書店のような大型の本屋が入っているのですが、この建物で初めてホテル事業にも着手しています。

※誠品生活は日本初上陸として、東京の日本橋にも出店し、2019年9月27日にオープンしました。

大通り側からは見る方向によって変わるユニテ・ダビタシオンのような外壁色の配置が特徴的です。

また松山文創園區という煙草工場の跡地側は下層の壁面が浮き出るような形をしています。

台湾大学社会科学部棟

この建物の設計も伊東豊雄さんです。大学の研究室を並べるため建物は所々にヴォイドを持つ効率的な箱型ですが、庭に対して飛び出た図書館棟がユニークです。

樹木がランダムに生えるように柱を落としてそれぞれの樹冠が合わさることで陸屋根を作っています。柱は鋼管を軸として、その周りと樹冠をRCで作っています。

さらには陸屋根のため一番外側の柱は縦樋になっていて、雨水処理のディテールも隠されています。

陶朱隱園(Tao Zhu Yin Yuan)

台北の観光名所、台北101の近くにある高層住宅です。設計はベルギーの建築家、ヴィンセント・カルバウト(Vincent Callebaut)です。

円柱に付いた両翼が回転しながら高層化していくという”ねじれ”を持った形態です。最終的にはバルコニーに背の高い木々が植えられ、環境に配慮した建築とするようです。

またこれだけの規模で40戸という超高級住宅で、最も安くて18億元(約70億円)という価格が発表されていました。

臺北南山廣場

この建物は台北101のすぐそばにあります。台北101よりは背が低いですが、双塔を成す建物です。

設計は三菱地所設計が行なっています。オフィスタワーは”合掌”をモチーフにしているようです。

商業棟の外装には台湾の花である梅を象ったステンレスの鋳物が使われていて、夜に金色にライトアップされる様子が華やかで、丸の内や銀座にありそうな高級感のあるファサードデザインでした。

臺北表演藝術中心(Taipei Performing Arts Center)

台北のMRTの駅、剣潭駅(Jiantan Station)の近くにOMAが設計したこの建物はあります。コンサートホールなどを内包しており、異次元的なアルミニウムの球体が目にとまります。

電車からも気にならずにはいられない奇妙さで、これもまた建築なのかと疑ってしまうほどです。なんだかSF的な世界観です。街中の巨大な球はインパクトが絶大でした。

竣工予定は2019年2月で告示現場の仮囲いにセクションパースが描かれていました。完成したら是非とも中に入ってみたいですし、球体を下から見上げてみたいなと思っています。


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剣潭駅(Jiantan Station)

OMAが設計した臺北表演藝術中心のすぐ近くにこの剣潭駅はあるのですが、橋梁的な吊構造の駅舎は初めて見ました。

アンカーブロックは線路の高架とは別で地上に落ちていて、ケーブルでホームの屋根を吊っています。

台湾にはRCで造られた橋が多いように思うのですが、こちらの主塔もRCでできていて、先端の鋭利なフォルムが美しいです。

富富話合

この建物は日本の建築家・平田晃久さんが設計した集合住宅です。グリッド分割した中でブロックを積み重ね、住戸のテラスに対して庇がかかっています。

その小さなボリュームが斜線制限をかわしながら上方向に自生していく、平田さんの設計スタイル”からまりしろ”のある建物です。

からまりしろがあるということは、自然的な有機物の持つ外部接触(表面積)を多く持つということです。

庇の方向は雨水処理のルートを含めて綿密に計算されていて、縦樋の鉛直ラインも含めたファサードデザインとなっています。

すでに終了していましましたが、台湾の新竹公園でやっていた建築展でもこの「富富話合」は紹介されていました。

白石画廊 Whitestone Gallery

台北の西湖駅の近くにある日本の建築家・隈研吾さんが内装デザインをしたギャラリーです。

台湾では木をメインに使用した建物があまり見られませんでしたので、ここでは対照的に木の持つ性質を改めて感じられます。

こちらに関しては別記事でも詳しく紹介しています。

台北という”まち”の考察

台北の建物探訪は”まち”のコンテクストを肌で感じ取りながら、「その場所に対してどういうものなのか」ということに着目していました。

その結果、既存市街とは切り離された近代的な建物が目立っている気がしてならなかったです。台北の密着した建物は1階部分をセットバックさせてピロティを形成してそこに面して店があります。

そして上階は居住のために使われていて設備がファサードに露出し、人が住んでいるという実態があります。

そういう人間のナマの生活という獰猛さが台湾のコンテクストなのではないかと思う一方で、新たな建物はキレイすぎて次元の違う世界が現れているように思いました。

しかしそこが次世代の台湾なのかもしれません。

新たに作るものは時代の動きの中でその動きに長く耐えられるものでなくてはならない、という尊敬する内藤廣さんの考えを身をもって実感しました。

おわりに

今回の初めての台湾旅行は一人旅でした。海外の一人旅は刺激的で楽しいです。この台湾の一人旅を皮切りに、ヨーロッパ諸国やタイにも行ったのでした。

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