はじめに「マンションの計画」
今回はマンションの計画をしてみます。
マンションは建築計画の中で基本となる用途だと思います。
ですが賃貸や分譲、板状かタワーなど、同じマンション用途でも計画の考え方は違ってきて奥が深いものです。
ページの最後に動画もあるので、そこだけでも見てもらえると嬉しいです。
敷地条件を整理する
今回の計画地は東京都23区のとある敷地です。
それ以外の敷地条件や建物規模は、次のとおりです。
このように、計画するにあたってまずはその行政で定める都市計画や条例を洗いざらい調べていきます。
賃貸マンションをプランニングする
そして、今回の計画は賃貸マンションとしています。
賃貸であると一般的に、ワンルーム住戸(25㎡程度)をベースで計画し、条例で定められるファミリー住戸(40㎡以上)を最低限設けるというケースが多いです。
また、管理人の拘束時間も住戸数や面積帯と絡んでいることが多いです。
例えば港区の場合、30戸以上になる場合、1日8時間以上の週5勤務が求められるというようにです。
このように、様々な要素がプランを決める上で絡んできます。
さらに設計的な話では、柱割り(柱をどのスパンでどこに設けるか)について住戸を効率良く配置する上で考える必要があります。
一般的なのは、4つの柱で囲われた面積を55㎡程度とし、基準階をワンルーム2戸(27㎡程度)、上階をその2つの面積がくっついたファミリー住戸(55㎡程度)とするパターンです。
そうすると大きい梁が部屋の中を横断することもなく、プランニングがしやすいです。
そして今回はこのような一般的なプランとしています。
そして1階部分の計画も同時に行います。設計する上での肝となるのが、避難経路と駐車場・駐輪場の台数、位置です。
賃貸マンションの場合、階段は屋外であることが多いです。
そこにはコストや法規制が絡んでくるのですが、1階まで階段で降りた後の道路までの避難経路をまず確保する必要があります。
また、駐車場・駐輪場の台数はマンションの場合条例で決められていることが多いです。
これらは建物内に配置するのか、屋外に配置するのか、という点が設計のポイントとなります。
今回は駐車場1台(バリアフリー対応)と駐輪場住戸数+α分を敷地内に設ける必要があります。
そして、建物の形状そのものを大きく左右するのが斜線制限と日影規制です。
本敷地を含む辺り一帯は商業地域なので、日影規制はありません。肝になるのは道路斜線制限です。
当然、天空率を使って道路斜線を緩和するのですが、今回は前面道路の幅員が6mと4mと狭いです。
そうすると縦長の建物になり、さらに厳しい場合、建物の4隅が面取り(カット)される形状になります。
デザインをし建物の価値を作る
そして法規制などを満たしたプランに対して、外観デザインを行います。
デザインを考えながらプランニングもしているのですが、結局はデザインをフィードバックする形でプランを調整していくことになります。
そして今回考えたデザインが次のようになります。
こちらは広い道路側からのパースになります。
ザ・共同住宅という形ではなく、あまり無いような商業的な要素を入れたデザインとしました。
設計視点では、天空率で削られた建物の角をデザインに変換することを意識しています。
結果としてあまりマンションには見られないデザインにできたと思っています。
仮に実現化する際の問題点
好きにデザインしてみましたが、実際建てる時にはこのデザインにはしないと思います。
勿論、これでも法的に成り立っているので、実現しようと思えばできます。ただ、コスト面を考慮するとこのデザインに出来ない理由があります。
それは省令40号を使えなくなる点です。つまり、スプリンクラーの設置免除ができなくなるのです。
やはりコストを考えると、経済的な計画と言えなくなってしまうのには問題があります。別のデザインも考える必要がありそうです。
おわりに「ないがしろにできない建築デザイン」
以上、空想のマンション計画でした。
マンションは人が住むという特性上、使い勝手や安全性、メンテナンス性をより重視しながら計画していく用途です。その過程でデザインというのは、それとは相反する要素が混ざっているものです。
例えば見た目がかっこよくてもメンテナンスをどうするかなど、気にしなくてはならないです。それでも見た目というのは購買意欲や住むステータスにも関わってきます。
常にデザインは相反する何かと戦いながら実現するものだと思います。
そんなことを考えながら空想の計画をしていました。
簡単な動画も作ったので、よかったら見てみてください。
※この記事ではボリュームプラン・企画設計として、この敷地にどんな建物が建つか、どんなデザインにしたいかという検討段階を書いていきます。