2世帯住宅の実例を元に建築士が解説|東京ゼロエミ住宅

設計

はじめに「2世帯住宅で東京ゼロエミ住宅を申請」

私は建築士として仕事をしているため、知人からハウスメーカーの見積りを見てほしいと依頼を受けることがあります。

最近は、その見積りの中でよく”東京ゼロエミ住宅”の文言があります。

私はこれまで大小様々な規模の建物の設計をしてきましたが、省エネ基準については近年のホットワードで、基準も頻繁に改正されます。

中でもZEH(ゼッチ)はすでに浸透してきているワードだと思いますが、東京ゼロエミ住宅は東京における新築住宅の新たな基準です。

それが一体どのようなものなのか、相談を受けた以下の条件をモデルケースとして、建築士としての視点から紹介していきたいと思います。

【モデルケース】
・都内3階建戸建住宅
2世帯住宅
・敷地面積80㎡程度
・延床面積120㎡程度

東京ゼロエミ住宅とは

まず初めに、東京ゼロエミ住宅というのは、高断熱で省エネ性能の高いことを証明した住宅のことで、かつ東京にある住宅のことを指します

具体的には、以下のような仕様を高くすることでこの基準を達成することになります。

【東京ゼロエミ住宅を達成するために高くする仕様】
・断熱材
・窓
・照明
・エアコン
・給湯器
・水栓
・浴槽 など

その他、エネルギーを作り出す太陽光発電の導入も効果的です。

住宅を計画する上で、外の気温に対しての家の中の気温を常に快適に保つ、というのが高断熱仕様にする目的です。

今回の2世帯住宅の計画では、上記に挙げたような一般的な仕様を上げることに加え、蓄電池の導入もしています。※太陽光発電は導入していません。

省エネ性能の異なるゼロエミの3つの水準

では東京ゼロエミ住宅の仕様にする際に、具体的にどのような基準になっているのかというと、下図の通りです。

【参照】東京都環境局HP| https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/climate/home/tokyo_zeroemission_house/gaiyou.html

専門用語が多くとっつきにくいかもしれませんが、用語について簡単に紹介しておきます。

外皮平均熱貫流率(UA)
建物の外壁や屋根などからどれだけ熱の影響を受けるかという指標です。この計算は少しとっつきにくいので、数値が小さいほど性能が良いと考えてください。

省エネルギー削減率(BEI)
国が建物のエネルギー消費量の基準を定めていますが、その数値に対して、計画する建物がどれだけエネルギーを使うかという指標です(ex.国の基準が1.0で消費量が0.8だったら20%の削減ということになります)。

建築物省エネ法(6地域)
省エネ法で定められている基準があります。外皮平均熱貫流率(UA)=0.87、省エネルギー削減率(BEI)=1.0です。この数値が一般レベルと考えれば大丈夫です。「6地域」というのは日本全国をエリア分けした時の東京を含むエリアです。

ZEHの判断基準(6地域)
ZEH(ゼッチ)とは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略で、エネルギー収支をゼロにするという意味です。これも省エネ性能の指標になります。こちらはより高断熱・高エネルギー効率の建物として、省エネ法の基準より高い水準になっています。

東京ゼロエミ住宅の水準
東京ゼロエミ住宅は、水準が
1233種類あります。水準3が一番省エネ性能が高く、北海道相当の断熱性能になります。省エネ法で基準となる断熱性能がUA=0.87と先述しましたが、東京ゼロエミ住宅はどれもそれ以上の性能となります。

ちなみによく言われていることですが、断熱性能が良いと下記の効果があります。

【高断熱住宅の効果】
・ヒートショックの予防
・光熱費の削減
・結露の抑制

高断熱というのは、例えば冬場にエアコンをしなくとも暖かいこともあります

それは実際に住宅展示場などに足を運んでみるとよく分かるので、ぜひ体験してみてください。

また、設計者として把握しておくべき仕様は次のようなものがあります。

【ゼロエミ住宅を設計する際の仕様例】
・窓の仕様は熱貫流率UA2.33w/(㎡・K)以下
・面積0.5㎡以内はUA3.49w/(㎡・K)以下
そのほか玄関ドアや壁、屋根、天井、床等の断熱仕様の基準あり

UA=2.33というのは断熱等級H=5のサッシになります。

それは樹脂サッシや、トリプルガラス、二重窓など、高断熱のサッシにする検討が必要になります。

省エネ性能を上げると助成金がもらえる?

私が相談を受けた案件は、東京ゼロエミ住宅の「水準3」を取得します

実は、13のどの水準にするかでもらえる助成金額が変わってきます

先に東京ゼロエミ住宅の助成金をもらうための条件を整理します。

【東京ゼロエミ住宅の条件】
・都内の新築住宅であること(戸建でもマンションでも可)
・床面積2,000㎡以下
・ゼロエミ水準に適合すること

そして助成金額については次のとおりです。

【参照】東京都環境局HP| https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/climate/home/tokyo_zeroemission_house/gaiyou.html

その他、太陽光発電や蓄電池を導入する場合は、それらについても助成を受けることができます

今回相談を受けたのは2世帯住宅でした。では、2世帯の場合の助成金はどのように考えればいいでしょうか。

その答えは公式のQ&Aに次の通り記載がありました。

「原則として玄関ドアを出て外からだけ行き来できるのであれば2住戸と判断し、集合住宅等として審査します」

そうすると、建物内でお互いの行き来をしない2世帯住宅はゼロエミ水準3ですと、170×2=340万の助成金を貰えることになります。

2世帯住宅を検討する際は、こちらも考慮に入れる必要があります。

例えば玄関は共用の2世帯にしようという場合は、助成金は変わってきますので注意が必要です。

また、今回の計画では蓄電池も導入する予定です。

蓄電池については機器費、材料費及び工事費の3/4の費用が出ます。

上限は15/kWhかつ120万円/戸です。導入するのは5kWhの機器なので、上限は75万円ということになります。(※その他条件あり)

そして、設計者として留意が必要なのは申請のタイミングです。

助成金の申請の通知日より前に確認済証の交付を受けてしまうと、助成金の対象外になってしまうため注意が必要です。

他の断熱基準、HEAT20とは

また、東京ゼロエミ住宅の水準3というのはUA=0.46で断熱性能は高く、HEAT20の基準にも必然と適合します。

HEAT20とは住宅の断熱に関する基準です

省エネには色々基準があって難しいと思いますが、HEAT20は客観的に「あなたの家はこの基準をクリアしている」ということが分かるものです。

今回の計画では東京ゼロエミ住宅水準3であり、これはHEAT20 G2レベルになります。

HEAT20G1G2G3の基準があり、G3が最も断熱性能が高いことになります。

ちなみに、それぞれの断熱性能については以下のとおりです。

【HEAT20の水準】
G1:UA=0.56
G2:UA=0.46
G3:UA=0.26

おわりに「高い省エネ性能が求められる世の中へ」

以上、東京ゼロエミ住宅を中心とした省エネ基準についての紹介でした。

省エネについてはマンションやビルなど、あらゆる建物に対して求められますが、とりわけ戸建住宅が最も高い水準で求められてきます。

建築業界的には、まず戸建住宅の省エネ性能を上げようという動きが顕著に見られ、今後はより高い水準が求められてきます。

それは設計者が知らなくてはならないのはもちろん、住宅の購入者も知識を蓄え、自分の家をどの水準にしたいか、設計者と一緒に考えていく必要があると思います。

この記事が少しでも参考になれば幸いです。

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